息子夕食、娘弁当

「ちょっと挨拶に、顔を見に行くよ」

日曜の晩、息子が彼女を連れてやってきた。我が家に来るのはいつ以来だろう。

友人の誕生パーティの帰りで、2人ともあまりお腹が空いていなかったようだけれど、夕飯時だったし、一応聞いてみる。

「なんか食べる？　…って言っても何もないけど」

「パパのPasta in biancoが食べたいな、トロトロのやつ」

パスタ イン ビアンコって、チーズを絡めただけの「素パスタ」だ。お安いご用だけれど、でもなんかそれだけじゃ寂しい気がする。テレーザもいるし。

冷蔵庫を覗いたら、薄切りベーコンがあったから、それを使って「グリーチャ風」にしてみた。

予期せぬ突然の訪問者への、ささやかな愛情料理。

久しぶりの家の空気が嬉しかったのか、息子は妙にご機嫌だった。お姉ちゃんに絡んで、2匹の猫のように戯れあって、そして去っていった。

「パパ、こんどの日曜、ゴルフに行こうか」

僕のゴルフクラブを振り回しながらそんなことを言っていたけれど、期待するとがっかりするから忘れることにする。

そして今日、月曜の朝。

娘弁当、新たな1週間の幕開けは、前日から仕込んであった鶏腿肉で、中華風の味付けに。ネギを絡めて、七味唐辛子を振りかけてみた。イメージは焼き鳥屋さん。

茹でたインゲンには、オリーブオイルと醤油少々、鰹節を。隠し味に、ちょっとだけ味の素。

あぁ、冷蔵庫も、頭の中も、もう空っぽだ。

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