金沢に来る前、そう、まだイタリアにいる時から色々と調べていたんです。特に食事処。
インスタの投稿を参考にしたりしながら、Google mapsの「行ってみたい」に保存して…
でもね、初日の夜の寿司屋も、2日目のエスニック料理屋もハズレでした。
老夫婦二人で営んでいる小さな寿司屋は、シャリが全然駄目。酢が効いていない米は柔らか過ぎたし、ネタも小さい。はっきり言って握り方も下手。小さな店内は外国からのお客様でいっぱいで、その雰囲気に、寿司に、喜んでいる様子だったけれど… ただ老夫婦の物腰だけはとても味があって、それは救いだった…
エスニック料理屋のフォーは、味は悪くなかった。でも、如何せんぬるかった。外が寒かったから、そのぬるさを余計に感じちゃって…
結局ね、現地で自分の勘と鼻を信じるのが一番だったのです。
そしてこの夜、暖簾をくぐったのがこのお店。
「二人なんですが…」
「申し訳ありません、今夜は予約で一杯で…」
でも時間はまだ17時半、「パッと食べて退散しますから」と粘ると、「それならどうぞ」
カウンター席に座りました。
その時は、それが長い夜の始まりとも露知らず…
左、三つ向こうの席には一人の常連客がいらっしゃいました。
(さっさと食べて呑んで出ていかなきゃね…)
そう思いながら、注文したいくつかの料理を楽しんでいると、席を一つ空けて右隣りに、やはり一人のお客さまがやって来ました。
こちらも明らかに常連客、ダンディな装い。素敵な黒い帽子を取って席に座ると、キープしていた焼酎でお茶割りを飲み始めて…
何のきっかけだったかな、ふと、この方に話し掛けられたのです。
そしてその後、話が盛り上がっちゃって!
当然、僕がイタリアに住んでいるってことに始まり、彼が行ったイタリア旅行の思い出に展開、の定石。それからもちろん、ここ金沢、地元の話。お互いの仕事のこと…
自然、僕に対するお店の方の表情もやわらいで…
結局、このカウンター席がいっぱいになることはありませんでした。きっと、この場所は常連客だけに空けておきたかったんだろう…
建築家であるというO氏は、ますます上機嫌になって、叫んだのです。
「お前のこと、気に入った!おい、タクシー呼んでくれや!」
向かった先は、主計町茶屋街。
店に横付けされた車を降りて、引き戸を開けた向こうは別世界でした。
光と影。
一枚板の、大きな長いカウンターの向こうに佇む、和服姿の女性。
「一見さんはお断りしています」
彼女は、はっきりと仰っていました。
次々と、不思議に美味しい日本酒と小料理を頂いた後、
特別に、その茶屋の二階を見せて貰っていると、
再び、O氏が仰いました。
「よし、もう一軒行こう!」
二軒目の茶屋の中は、先ほどとは違う、現代風の空間でした。
ここでも、元芸妓だという素敵なお姉さまからウイスキーを頂いて…
「おい、カラオケ行くぞ!」
「えぇ!?」
僕たちは再びタクシーに乗って、茶屋街を離れたのでした。
スナック?バー?もうよく覚えていないけれど、良い味出してるマスターがいるお店。何曲歌ったか…
この夜、僕の財布が開くことは一切なく、全て、全て、O氏がご馳走してくれました。
ホテルに帰ったのは、何時だったか…
翌日。二日酔いの身体を引きずって、再び主計町茶屋街へ戻ってみました。
(最初に訪れた茶屋は、何処だろう? 確かにこの辺りだけれど…)
実は茶屋で遊んだ写真もあるのです。中の雰囲気も、和服のお姉さんの姿もね。
でも載せません。
「粋」を大切にする空間を写真に撮って公開するなんて、それは「野暮」ってものですから…
茶屋遊びの粋茶屋遊びは、限られた空間と時間の中で繰り広げられる非日常の世界である。
お茶屋を訪れる客たちは、日常の暮らしとはかけ離れた華やかな空間に引き込まれることになる。紅殻格子の内部は格の高い、洒落た遊び心を合わせ持った贅沢なつくり。その粋なしつらいと共に、客を艶やかな世界へと誘うのである。そして、そこに居合わす客と芸妓がひとときの時空間を共有する。もてなす側ともてなされる側がともに芸に興じてこそ、茶屋遊びの「粋」は成り立つ。
芸妓は茶屋という非現実的な空間に生きる存在である。歌舞音曲の類はもちろんのこと、装いや小物選び、指先のふとした仕草にも気を配り、全身であでやかな美や粋を表現する。時節のうつろいに合わせて客の心を満たす幅広い教養も必要とされる。
客は贅を尽くした空間に遊ぶ、芸と美の後援者でもある。家の側にも芸を解する力量が問われ、旦那衆は茶屋通いのために自ら稽古事をする。芸をたしなみ、酒脱た心がなければ、芸妓が捧げる優雅で粋な場面を楽しめるはずもなく、「野暮」とされる。
最上の客とされるのは、芸妓を楽しませるほどの懐の広さを持った者であり、最高の芸妓とは、客に我を忘れさせる術を身につけた者のことを言う。茶屋遊びのために、旦那衆は労を惜しまず、芸妓はそれに応えて自分を磨き続ける。茶屋文化は、「粋」を至上とする芸妓たちと日那衆によって守られてきたのである。
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