麻薬

先日、ゴルフ場で働き始めた青年のことを書いた。名をAdrian(エイドリアン)と言う。

その後も一生懸命よく働くのを毎日のように見てきた。今ではすっかり仕事にも慣れた様子だ。

いつも変わらず子犬のように懐っこく近寄って来る。

最近では、特に日暮れ時、もうゴルファーの姿もなくなって、仕事を終わりかける頃、ゴルフクラブを一本持って僕の所へ来る。

「見ててね!」

誰にもらったのか、何年前のものか、錆びたピッチングウエッジ。グリップもボロボロ。見よう見まねのスイングで、空振りをしたり、ダフったり… たまに上手く当たると実に嬉しそうだ。

時々、僕のクラブを使わせてあげる。

「いやー、この白いグリップはカッコいいなあ!」

その笑顔を見ると、自分の大事なクラブを貸すのが嬉しくなる。

昨夕、19時前。もうゴルフ場には、ほんとうにお客さんが居なかった。でも彼は20時までが勤務時間だと言う。彼のことを見張る人も居ない。「あっちの、アプローチ練習場へ一緒に行こうか」と誘うと、満面の笑顔でついて来た。

「じゃあ1人3球ずつ、どっちが近くへ寄せられるか勝負ね」

赤、白、緑、3本の旗が立っている。どれにする?

「白!」とエイドリアン。思ったよりも上手に打っていたけれど、そりゃ僕とは勝負にならない。スーっと寄っていく僕の球をまるで自分のことのように喜び、はしゃいでいる。打ち方のコツを教えてあげる。すると、何度も、何度も、「もう1回!」「もう1回」…

「もうこれはまるで麻薬だ!」

そう叫びながら、走って、繰り返しボールを拾いに行くエイドリアン。

もう太陽はすっかり沈んじゃって、ボールもよく見えなくなっていた。でも「今度こそ最後」という彼と一緒に、いつまでも遊び続けた。

こんなこと、本当は自分の息子としたかった。

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by kotaro_koyama | 2022-09-01 13:51 | イタリア暮らし | Comments(0)

主夫と生活、ゴルフのこと。


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