雨の合間に
2022年 05月 07日
庭師ハッサンから電話があった。
「実は今モロッコに居るのです。父が突然他界してしまい…」
しばらく来ないなあ、どうしたんだろう、と思っていたところだった。
月曜日、仕事中に突然訃報を聞いた。動転して気が狂いそうになりながらも、急遽帰国の手配をして、水曜日に飛んで帰った。でも、父の遺体は既に土の中に埋められてしまい、お別れをすることができなかった…
蘇りを信じるイスラム教では、24時間以内に土葬しなければならないと聞いたことがある。父親の死に目どころか、最後に顔を見て、触れることも叶わなかった息子の無念な気持ちが電話越しに伝わってきた。僕はもう両親共に失っているけれど、遠く海外に暮らす者として、ハッサンの立場は痛いほどよくわかる…
庭の隅には、彼が刈り取ったエニシダや雑草が、まさに山のように積み上げられている。
「少しずつ燃やしますから」
彼は言っていたけれど、帰ってくるのは2週間位先になるみたいだし、これ、全部燃やすのにいったいどれくらいの時間が掛かるのだろう?お金を節約するためにも、少しずつ燃やすことにした。
今日は雨の合間に3時間ほど派手に燃やした。でも、目に見えて減ったように見えない。全部燃やし切るのに1週間近くかかるな…
燃え上がる炎の中で灰になっていく木を見ながら、火葬のこと、土葬のこと、輪廻転生のことをぼやっと考えた。
by kotaro_koyama
| 2022-05-07 01:06
| イタリア暮らし
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