空の青さを知る人よ

木曜、夜。親知らず抜歯後の腫れが続くRiki。カリフラワーのポタージュと豆腐のステーキを食べながら、言った。

「パパ、明日はちょっと早く学校へ行くね」

今週は、歯医者、おサボり、で、月曜日にしか学校へ行っていなかった。いよいよ高校卒業試験の為に必要な出席日数に赤信号が灯っている。明日金曜日はどうするんだろう… 心配していたから、そのやる気にちょっと驚いた。でも、実は、授業に行くのではなかった。

イタリアの高校には、「生徒協議会」という機関がある。法律で定められた、公のものだ。

全国それぞれの高校を2人の生徒が代表して、個々の高校が抱える問題をぶつけ合い、話し合い、共有し、共通の課題として教育省へ提起する仕組みである。個別の学校の案件に留めるのではなく、国レベルでよりよい教育環境を作っていこうというものだ。

Rikiは、その協議会のメンバーになっている。彼の高校の代表を務めている訳だ。日本で言うところの生徒会長か。そういう「政治的活動」には斜に構える奴だったはずなのだが、何がきっかけになったのか、何を思ったのか、昨年立候補をして、そして選挙で選ばれたのだった。

イタリアだから、と言う訳でもないが、校舎施設の不備に始まり、問題は山積みである。最近では、もちろんコロナ禍における授業方法もテーマになっているようだ。そしてここにきて発表された高校卒業試験の方式変更。生徒たちから言わせると、それは教育省による一方的な行為、決定であり、受け入れ難いのだ…

国へ問題提起、と言えばソフトに聞こえるが、イタリアの若者達である。大人しいことで済むはずがない。彼らの行動の根幹をなすのは、デモ活動なのだ。

州内の各高校のメンバーが集まり、デモを計画する。手作りのビラ、大きなシーツで作った横断幕。メガホンを片手にPiazza(広場)で雄叫びをあげる。シュプレヒコールと行進… 傍から見ると、デモをすること自体が目的になっているように思えなくもないけれど、本人たちは至って真剣だ。

数日前には、18歳の生徒が、授業の一環で行っていた職業体験の最中、落下してきた鉄骨の下敷きになって死亡するという事故が起こった。これに抗議し、トリノで行われたデモでは、警察と衝突する場面もあったとニュースでは流れていた。60年代の学生運動とまではいかないが、それに近い雰囲気が、時にある。

デモの朝は、早く学校へ行く。一般の生徒たちに声を掛け、ビラを配り、授業をボイコットして一緒にデモに参加するよう説得するのだ…

いつもの場所に車を横付けすると、横断幕を抱えながら降りて行った。カメラを向けたら、嬉しそうな顔をした。自分のしていることが親に認められたような気がしたのかもしれない。

その時、カーステレオからは、Rikiが好きな「空の青さを知る人よ」が流れていた。

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Commented by makikoai2005 at 2022-02-05 00:25
少し前からそっとお邪魔していました。初めてコメントさせていただきます。
デモに参加かあ。うちの息子(高2です)たちの様子と比べると、ヨーロッパの高校生って大人なんだなあと思います。社会や自分たちの置かれている環境に対する意識が高くて、生徒主体の自治活動もあるんですね。
Commented by kotaro_koyama at 2022-02-05 03:19
> makikoai2005さん
こんにちは!ご訪問ありがとうございます。自分が高校生だった頃と比較しても、こちらの高校生は大人びていると思います。中身はなくとも、自己主張がはっきりしていて、激しい!政治や社会に対する意識は、若者の間では他の国同様年々低くなっていると思いますが、それでも日本に比べれば高いと思います。何故でしょうね?
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by kotaro_koyama | 2022-02-05 00:03 | イタリア暮らし | Comments(2)

主夫と生活、ゴルフのこと。


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