商取引、イタリア流

明日は日曜日。イタリアのスーパーも、最近では日曜日に営業しているところが結構ある。でも時が時だし、もしかしたら閉まっているかもしれない、今日のうちに買い物に行っておくか... と3日ぶりに車に乗り込んだのだが... スターターが情けない音を立てるばかりで、ついにエンジンがかからなかった。

思えば3日前、確かにバッテリーの不調を感じていた。もしかしたら寿命なのかな、と思ったけれど、そのまま忘れていた。そして家に籠もってしまっていたのだった。

昔の車なら、下り坂まで押して行って、一速に入れながら無理矢理エンジンをかけるところだが、色々と電気化されている最近の車はなかなかそうもいかない。特にサイドブレーキ、どうやって外すんだ?

早速、日本のJAFにあたる会社、ACIに電話をする。会員番号を伝えると、「Koyamaさまは、昨年既に一度ロードサービスをお使いになっています。あなた様のカードは、一年に一回だけ無料サービスが受けられるタイプのものですから、今回は有料になりますが?」と言われた。ちょっと丁寧に日本語に訳したが、実際はもっと冷たく突き放された言い回しであった。

料金を聞けば、140ユーロだと言う。んー... こんな状況では、友人に助けを求めるのも気が引ける。高いが致し方ない、サービスを頼むことにした。

しばらく待つと、電話が鳴った。

「ドットーレ!元気かい?ミケーレだよ!」

ロードサービスのコールセンターから派遣依頼が行ったのだろう、近所にある自動車修理工場の社長だった。以前、修理をお願いしたことがある。

「どうしたんだい?今すぐ若いのを送るよ!あ、でも... 非会員扱いって言うことになってるねえ。ACIの会員じゃなかったっけ?」

事情を説明すると、その社長は言った。

「140ユーロ?それはもったいないねえ... もしよければ、うちと直接取引という形にしちゃえば?安くしておくよ。ACIには、もう一度電話をして救援を断ればいいだけだから」

その申し出に、二つ返事で乗ったのは言うまでもない。

やがて若いお兄ちゃんがやって来てくれて、車のエンジンは無事にかかった。でもバッテリーが寿命なのはまず間違いなかったから、新しいものを購入する必要があった。もうすぐ13時。ほとんどのお店が閉まる時刻である。そのお兄ちゃんに聞いたら、彼らの工場のすぐ隣にバッテリーを扱っている卸問屋があるという。すぐに電話をしてくれて、在庫を確認、一緒に現地へ向かった。

自動車用品問屋の従業員も、ミケーレが経営する修理工場でも、皆がマスクをし、手袋をしていた。

無事に新しいバッテリーを引き取り、ミケーレのところで付け替えてもらった。お昼休みになる直前の出来事だったけれど、すべてがスムースに終わった。まるでイタリアじゃないみたいだ。しかも、このコロナ騒動の中。

いざ支払いの段になったら、ミケーレは言った。「救援代金ね... 領収証なし、現金払いなら、80ユーロでいいよ」

「領収書なしでいいなら...」この悪い習慣が、イタリアの地下経済を発達させてしまう原因であることはもちろん承知している。でも、今回のこと、僕は別に経費で落とせるわけでもないから、領収証なんていらない。140ユーロするところが、80ユーロでいいと言われたら、あなたは断れるだろうか?

青い手袋をしたままの彼に代金を渡した。そして僕は、「ありがとう!握手はできないけれど...」と言った。机の向こうに立って、少し距離を置いたまま、彼は答えた。「うん、悲しいけれど、ね...」

本来ならば、ガッチリと握手を交わすところだ。怪しい現金取引をした後なら尚更握手が強くなる。それがイタリア流なのに。

帰り路、車のエンジンは快調な音を響かせていた。すべてが順調に解決して、晴れやかな気持ちになっていいはずだった。でも、寂しい気持ちは、やっぱり拭えなかった。

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by kotaro_koyama | 2020-03-15 02:10 | イタリア暮らし | Comments(0)

主夫と生活、ゴルフのこと。


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