非常事態の中の日常

ご存知の通り、イタリア全土が「プロテクトゾーン」になってしまった。仕事、日用品の買い出し、緊急の用件以外では外出するな、という法令である。

早速、都会のスーパーなどでは、人々が買い溜めに走ったというニュースが流れた。僕の家は、旧市街中心から少し外れたところにある。長閑な田舎だ。周囲には何もなく、人の動きを見て世の中の雰囲気を感じることはできない。

いつも行く近所の小さなスーパーも混乱しているのかな... そう思いながら午前11時、家を出た。その店は、いつもと変わらないお客の数だった。でも、皆どこそこ神経質になっているのを感じる。そしてお互いの距離を遠く保とうとしている。生ハムを買おうと惣菜コーナーに近づいたら、いつものおばちゃんが「それ見てね」と笑顔で合図した。床を見ると、黄色いテープが貼られていた。「黄色い線の外側でお待ちください」である。日本で電車に乗る時のアナウンスを思い出してしまった。

他のお客さんの買い物カゴを見ると、皆、多めに物を入れているように見えた。「買い溜め」と言うほどではないが、いつもより多いことに間違いない。 そう言う僕も、肉や野菜に加えて、瓶詰めや缶詰... やっぱり普段の買い物より一品、二品、多く手に取ってしまうのだった...

さて、この緊急事態措置は、当面4月3日までのこととされている。学校の休校もそれまで延長された。そして、ついにゴルフ場も閉鎖されてしまった。ゴルフは、理論上、法令では制限されていないはずの屋外個人スポーツなのだが、ゴルフ場としては閉鎖せざるを得ないのは理解できる。

ゴルフもできないんじゃあ、庭仕事でもするしかないだろう、そう、ちょうど芝生の更新時期だ。やることは沢山ある...

芝刈り機のためのガソリンを買いにスタンドへ寄ると、同じように燃料を買い求めるおじいちゃんがいた。おじいちゃんは、僕が手にした赤いタンクを見て、

「そうそう、こんな時は家で庭仕事をするのが1番だよな!」

自宅へ戻って、芝の手入れをした。まずはバーチカルカット(根切り)、そしてサッチ除去。それから綺麗に刈る。時折芝刈り機のエンジンを切ると、鳥のさえずりが聞こえるばかりだ。

戦時中、戒厳令が敷かれた時ってこんな感じだったのかなとちょっと思う。そんな時代でも、爆弾の音が聞こえない、戦線から遠い場所では、実は意外にのんびりした空気で、普通の日常生活を送っていたのかもしれない。しばらくの間、不便で、楽しみも奪われる事になるけれど、食料に困らないだけ僕たちは幸せだ。

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Commented by kobacken at 2020-03-12 13:18
kotaroさんのあたりは混乱もなさそうで何よりです。
早く終息して、今までの日常がかえってきますように。
Commented by kotaro_koyama at 2020-03-13 01:42
> kobackenさん
混乱、はしていませんが、日に日に周囲の人々、雰囲気がナーバスになっています。いやーな雰囲気... 早く過ぎ去って欲しいです!
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by kotaro_koyama | 2020-03-11 18:05 | 晴耕雨読 | Comments(2)

主夫と生活、ゴルフのこと。


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